20代後半に出会った「菜根譚」。生きずらい世の中で、本当に救われることが多い。芸能人や著名人等々のアドバイスの元は、菜根譚からなのかな?と思う事がしばしば。
それでは、「菜根譚」のご紹介から。
菜根譚の紹介
世の中がどれほど変わっても、人の悩みは変わりません。
人間関係の軋轢、将来への不安、そして自分自身の弱さ……。
今から約400年前、中国・明の時代、日本では戦国時代末期頃に
洪自誠(コウジセイ)によって著された『菜根譚(さいこんたん)』。
この書物は、中国本土ではほとんど知られておらず日本で支持されています。
江戸時代の東大「昌平黌」で学んでいた林蓀坡が読み、
感激し復刻版を出したことにより日本に広がりました。
田中角栄さん、野村克也さんなど著名人の愛読書としても有名です。
著名人も悩みは尽きないということでしょうか。
また、現代の人々にも読み継がれています。
この本は、儒教・道教・仏教に精通した人生経験豊富な大先輩のお話を聞く感覚で、
触れると、それぞれの教訓の深さが身に沁みます。
その第1条から第10条までを一挙にご紹介します。
前集第1項:正しい生き方とは
【原文】
棲守道徳者、寂寞一時。
依阿権勢者、凄凉萬古。
達人観物外之物、思身後之身。
寧受一時之寂寞、毋取萬古之凄凉。
【読み下し文】
道徳に棲守(せいしゅ)する者は、寂寞たること一時。
権勢に依阿(いあ)する者は、万古に凄凉たり。
達人は物外の物を観じ、身後の身を思う。
むしろ一時の寂寞を受くるも、万古の凄凉を取ることなかれ。
【私流訳】
人として正しい生き方を守る者は、しばしば不遇で寂しい境遇に陥ることがある。
一方で、権力者にこびへつらう者は、一時的に成功してもうまくいかなくなり永遠に寂しくいたましいものである。
真理に精通した者は、目の前の利益や権力ではなく世俗を超えたもの真実を見つめ、この身の死後の名声を考える。
だから人として、一時寂しくつらい状況に陥っても、人として正しい生き方を守るべきで、永遠に寂しくいたましい、権力者にこびへつらうような態度をとってはいけない。
【まとめ】
正しい道をいく者は一時的に孤独だが、権力に媚びる者は永遠に孤独である。目先の利益よりも、自分の信念を貫いて生きるべきである。
【現代風】
前集第2項:純朴のすすめ
【原文】
渉世淺、点染亦淺、歴事深、機械亦深。
故君子與其練達、不若朴魯。
與其曲謹、不若疎狂。
【読み下し文】
世を渉(わた)ること浅ければ、点染(てんせん)もまた浅し。事を歴(ふ)ること深ければ、機械もまた深し。
故に君子はその練達(れんたつ)ならんよりは、朴魯(ぼくろ)なるにしかず。
その曲謹(きょっきん)ならんよりは、疎狂(そきょう)なるにしかず。
【私流訳】
人生経験が浅ければ、世俗の悪習慣に染まるのも浅い。経験が深くなると、世の中のさまざまなたくらみをよく理解し、また染まると深い。
だから、人格者は、世の中のことを詳しく知るよりは、むしろ素直で飾りけがなく、人情が自然のままで偽りがない方がよい。
また、細かい社会のルールに縛られるよりも、世間知らずで変わり者である方がよい。
【まとめ】
策略を弄して立ち回るより、ありのままの素朴さ、あなたらしさで生きるべきである。
【現代風】
前集第3項:公明正大であるべき、ただ才能は隠すべき
【原文】
君子之心事、天青日白、不可使人不知。
君子之才華、玉韜珠蔵、不可使人易知。
【読み下し文】
君子の心事(しんじ)は、天青く日白く、人をして知らざらしむべからず。
君子の才華(さいか)は、玉韜(たまおさ)め珠蔵(たまかく)し、人をして知りやすからしむべからず。
【私流訳】
品位のある者の心のありようは、晴天の白日のように公明正大であって、常に人にわからないことがないようにしなければならない。
しかし、品位のある者の才能のすぐれたところは、宝物をしまうように、常に人に知られやすいようにしてはならない。
【まとめ】
優れた才能をひけらかせば、必ず嫉妬を招く。また、いやしい者と同じになる。品位のある者は、その光を内側に隠し、静かに自分の徳を磨き続けるものである。
【現代風】
前集第4項:世の中との付き合い方
【原文】
勢利紛華、不近者為潔。近之而不染者為尤潔。
智械機巧、不知者為高。知之而不用者為尤高。
【読み下し文】
勢利紛華(せいりふんか)は、近づかざる者を潔(きよ)しとなし、これに近づきて而(しか)も染まざるものを尤(もっと)も潔しとなす。
智械機巧(ちかいきこう)は、知らざるものを高しとなし、これを知りて而も用いざる者を尤も高しとなす。
【私流訳】
権力があり勢いがある人、お金持ちで派手な人などにたぐいの人に、常に近づかないように心がけている者は潔白である。しかし、これに近づいていても悪風に染まらない者は最も潔白な人である。
また、悪い策略等を知らない者は、高尚な人である。しかし、それを知っていても自分に利用しない者は、最も高尚な人である。
【まとめ】
欲に目が眩めば、真実は見えなくなる。自分の心を磨き、冷静に判断する。いろいろな知識を得ても、悪用せず、清らかな心を持ち続けるべきである。
【現代風】
前集第5項:つらいことは成長のチャンス
【原文】
耳中常聞逆耳之言、心中常有拂心之事、纔是進徳修行的砥石。
若言言悦耳、事事快心、便把此生埋在鴆毒中矣。
【読み下し文】
耳中、常に耳に逆らうの言を聞き、心中、常に心に払(もと)るの事あれば、わずかに是れ徳に進みて行いを修むるの砥石(しせき)なり。
若(も)し言言耳を悦ばし、事事心に快(こころよ)ければ、便(すなわち)この生を把(と)って鴆毒(ちんどく)の中に埋在(まいざい)せん。
【私流訳】
人間は、いつも、鬱陶しい忠告を聞き、常に思い通りにならないことがあって、これこそ徳を修めるための砥石となり、大いにためになる。もし、どんな言葉も快く楽しい事ばかりで、何事も自分の思ったとおりになれば、自分の人生を猛毒の中に沈めてしまうようなもので、ためにならない。
【まとめ】
耳に痛い忠告こそじっくり聞き、思い通りに行かない事も耐えて試行錯誤して生きれば、それが自分の心身を磨く場所になる。他人の心の痛みが解かり、人のつらさがわかるようになる。そして、自分を気持ちよくしてくれるお世辞にも注意が必要です。一方、苦労知らず順風満帆であることは、毒であり、人生が悲惨なことになりやすい。
【現代風】
前集第6項:喜び楽しむ気持ちを持つべき
【原文】
疾風怒雨、禽鳥戚戚。霽日光風、草木欣欣。
可見天地不可一日無和気、人心不可一日無喜神。
【読み下し文】
疾風怒雨には、禽鳥(きんちょう)も戚々(せきせき)たり。霽日(せいじつ)光風には、草木も欣々(きんきん)たり。
見るべし、天地に一日も和気なかるべからず、人心には一日も喜神(きしん)なかるべからざるを。
【私流訳】
暴風豪雨の日は、鳥までも寂しく悲しげに鳴く。しかし、晴れた穏やかな日には、草や木も喜んで楽しげです。
だから、天地には、たとえ一日たりとも穏やかで和らぐ日がなければならないし、人の心には、たとえ一日たりとも喜び楽しむ気持ちがなければならないのです。
【まとめ】
人間は、心の持ちようで喜び楽しむことができるのだから、自分の周囲まで暗くしてはいけない。毎日、喜び楽しむ気持ちを心がけるべきである。
【現代風】
前集第7項:本物は地味で平凡
【原文】
醲肥辛甘非真味。真味只是淡。
神奇卓異非至人。至人只是常。
【読み下し文】
醲肥辛甘(じょうひひんかん)は真味にあらず。真味は只だこれ淡なり。
神奇卓異(しんきたくい)は至人(しじん)にあらず。至人はただ是れ常なり。
【私流訳】
味の濃厚な料理は、本物の味ではない。本物の味はただ淡白なものである。これと同様に、奇抜な才能を発揮して見せる人は、すぐれた人間ではない。すぐれた人間は平凡な人間にみえる。
【まとめ】
刺激の強いものはすたれ、平凡なものは長く愛用される。また、本当の幸せは、ホッと一息のお茶など淡々とした日常にある。
【現代風】
前集第8項:普段の心がけ
【原文】
天地寂然不動、而気機無息少停。日月昼夜奔馳、而貞明万古不易。
故君子、閒時要有喫緊的心思、忙処要有悠閒的趣味。
【読み下し文】
天地は寂然(せきぜん)として動かずして、而(しか)も気機は息(や)むことなく、停まること少(まれ)なり。
日月(にちげつ)は昼夜に奔馳(ほんち)して、而(しか)も貞明(ていめい)は万古に易(かわ)らず。
故に君子は、閒時(かんじ)に喫緊(きつきん)の心思あるを要し、忙処(ぼうしょ)には悠閒(ゆうかん)の趣味(おもむき)あるを要す。
【私流訳】
天地は、動いていないように見えるが、実際は休むことなく動いている。 太陽や月は昼も夜も休みなく駆け巡っているが、その不変の輝きは、太古の昔から変わることがない。 同じように、優れた人物というものは、ことなく平穏な時に危機に備える心構えをもち、どれほど多忙を極めていても、心の中には常にゆったりとしたしずけさをもつのである。
【まとめ】
暇なときに、差し迫ったときを思い備え、忙しい時に暇な時のゆったりとした心構えが必要である。普段の心がけが大事。油断しない、慌てない。
前集第9項:瞑想のすすめ
【原文】
夜深人静、独坐観心、始覚妄窮而真独露。毎於此中、得大機趣。既覚真現而妄難逃、又於此中、得大慚忸。
【読み下し文】
夜深く人静かなるとき、独り坐して心を観ずれば、始めて妄窮(もうきわ)まりて、真(しん)独(ひとり)り露(あらわ)るを覚(さと)ゆ。
毎(つね)にこの中において、大機趣(だいきしゅ)を得(う)。すでに真(しん)現(あら)われて妄(もう)の逃れがたきを覚ゆれば、またこの中において、大慚忸(だいざんじく)を得(う)。
【私流訳】
世が更けて、人々が寝静まった時、ただ一人、正座して自分の本心を観察すると、次第に邪念などは消えうせ、本来の清らかな本心が表れてくる。こうして、応用自在なこころの働きをつかむことができる。かくして、すでに本心が現れても、邪念などを捨てきれないと感じれば、一段と大きい懺悔の心が生じ、さらに成長しようとする。
【まとめ】
ただ、自分の心を内観する。400年前からマインドフルネス瞑想をすることを勧めています。
前集第10項:良い時はおごらない、悪い時はあきらめない
【原文】
恩裡由来生害。故快意時、須早回頭。敗後或反成功。故拂心処、莫便放手。
【読み下し文】
恩裡(おんり)に由来して害を生ず。故に快意の時、須(すべか)らく早く頭(こうべ)を回(めぐ)らすべし。
敗れし後、或(ある)いは反して功を成す。故に払心(ふっしん)の処、便(すなわ)ちを放つこと莫(なか)れ。
【私流訳】
世間の人々よく思われて絶頂な時、昔から災いが生じやすい。だから調子のよい時こそ、それまでを反省すべきである。また、物事が失敗したからこそ成功するものであるだから、自分の思い通りにならないからと投げ出してはいけない。
【まとめ】
調子のいい時、こそ気を引き締め、うまくいかないときこそ、成功に近いと信じあきらめない。
【現代風】
総括
ここまで、菜根譚の前集第1項から第10項はいかがでしたか?
一言一言に、背筋が伸びるような思いがした方も多いのではないでしょうか。
一度にすべてを実践するのは難しいかもしれません。
でも、今日聴いた言葉の中で、一つでもあなたの心に『これだ』と残ったものがあれば、
それが今のあなたに必要なメッセージです。
この総集編が、皆さんの日々の生活の中で、ふとした時に支えとなる『心のサプリメント』になることを願っています。
引き続き菜根譚を紹介していきます。今日も、あなたの心に穏やかな風が吹きますように。

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